10:名無しNIPPER[sage]
2016/04/11(月) 01:12:40.83 ID:B/SeA5U90
その後戦争が終わり少しすると、半年の昏睡から覚めたサーニャに手紙が届く。
エイラからの別れの手紙であり、基地にストライカーユニット三つが買えるほどの大金を置いて、その日を境にエイラは自らのストライカーとともに行方不明となってしまった。
11:名無しNIPPER
2016/04/11(月) 01:13:34.95 ID:B/SeA5U90
ここまで前置き
12:名無しNIPPER[sage]
2016/04/11(月) 01:14:17.38 ID:B/SeA5U90
「…寒い」
ウィーンの冬の夜は、いくらオラーシャで育っていても、寒いものは寒い。学校から家までのそう遠くない距離でも、一人で歩く冬の夜道は寒いのだ。
13:名無しNIPPER
2016/04/11(月) 01:15:06.12 ID:B/SeA5U90
時々、明け方に目が覚める。夜に寝るようになってからもう三年になるのに、かつての温もりを求めて体が動くのかもしれない。
私から空の世界を奪い去ることになったあの一発の砲弾がなければ、今こうして寒さを誰かと分かち合えない未来は訪れなかったのかもしれない。
若い少女を守った選択には、一抹の後悔もない。
14:名無しNIPPER[sage]
2016/04/11(月) 01:15:11.41 ID:QQ013tXx0
おk
一度書き込んだらsaga固定されるはずなんだけど…ごめんそこはよく分からないや
15:名無しNIPPER[sage]
2016/04/11(月) 01:16:27.43 ID:B/SeA5U90
もう会わない―――その方がお互いにいいだろうから―――そう手紙に残し、誰にも行き先を告げないまま、彼女は空の彼方に消えた。
今もどこにいるのか分からない。彼女の祖国では一時大騒ぎになり、捜索隊も組まれたが、やがてそれも下火となった。
時折一方的に連絡を寄越してくるということは、生きてはいるのだろう。その手紙はいつも大きく移動する前に書いているようで、次の手紙は何万キロも離れた所から送られてくることも多い。
16:名無しNIPPER[sage]
2016/04/11(月) 01:17:21.53 ID:B/SeA5U90
初めて話した時も、彼女は優しさに溢れていた。新しい土地になじめず一人ぼっちで不安でいた私のことを、過度に温めすぎないように、暖炉のような温もりをくれた。
その優しさに触れてしまった私は、いつしか彼女から離れることが出来なくなってた。
その優しさに甘えてしまった私には、自分で立つことすらままならなくなってしまったのだ。
17:名無しNIPPER[sage]
2016/04/11(月) 01:18:07.20 ID:B/SeA5U90
それは『信頼』なんて綺麗な言葉で飾れるようなものではない。
『依存』である。
18:名無しNIPPER
2016/04/11(月) 01:18:49.06 ID:B/SeA5U90
髪を落とし、自らの命を省みず捕われた私を助けに来たときに、たぶん彼女も同じなんだと思った。私たちは昔ほど鈍感ではなかったと思う。彼女だって私の想い気がついていたのだ。それでいて私を傷つけないように、と優しく触れていた。
19:名無しNIPPER
2016/04/11(月) 01:19:38.85 ID:B/SeA5U90
それは“共依存”だ。愛だの恋だのといった、美しくてもの悲しいものではない。もっと黒くドロっとしていて、タールのようにねっとりとこびりついたモノ。
かつて私たちの間に存在していたであろうそれは、気がつかないうちに越えてはならない一線を越えてしまっていた。
それに気づかないふりをして、戦いを口実に、ごまかしながら再び彼女の背中に体を預けられる日々を享受しようとして。
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