4:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 22:45:46.59 ID:skFt6CMPo
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わたしたちはあずにゃんだけを残して卒業しようとしたので、悲しんだあずにゃんは時間を凍結してしまった。
あずにゃんはわたしたちにとって天使だった。
それはたったひとりの後輩だったってことで、わたしたちはあずにゃんにやさしくして、いろんなことを教えて、特別な名前を付けて、とっても大事に扱った。まるで天使みたいだって感じに。
そして卒業した。
両腕で抱えきれないほどたくさんの贈り物を、わたしたちはあずにゃんに与えて、その贈り物からなる山岳のてっぺんに卒業を載せた。わたしたちのあずにゃんへの特別な愛は、最後にあずにゃんをひとり部室に取り残すという形で完成した。結局のところ先輩であるわたしが与えられる贈り物というのは、空っぽの部屋できれいに包装された箱の紐をほどいてはじめて贈り物たりうる、そういう類の贈り物でしかない。
生きるってことは時間を押し流すってことで、もちろんわたしたちは生きていて、だから卒業式もやってきて、けれど時間を凍結するというのは死によく似ていた。あずにゃんは死んだわけじゃないけどやっぱり死んだみたいな感じだった。
天使とは死者である。
というふうによく言われるのはちょっと間違っている。
天使とは永遠の時間に過ごすものであり、死とは時間の停止だった。その意味では死者も天使だったし、時間を凍結したあずにゃんもやっぱり同じ天使だった。
あずにゃんは、いまもよく降ってくることがあって、町中を、うろうろうろうろあてもなく歩き回り、それからふと思い立って羽を広げ、また空へと消えてしまう。
なんだかそういうのってゾンビみたいだとわたしは思う。
ゾンビは死んだ人だけど、映画とかでは蘇ったって言い方をときどきしてるから、はたしてゾンビは生きてるのか死んでるのかわたしにはよくわかんない。
運動するだけっていうだけで生きているって言えるなら、宇宙のなにもかもが生きている。
まあでも、とにかくそういうわけで、あずにゃん=ゾンビは永遠の17歳となり、そして再び天使になった。
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