6:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 22:46:45.63 ID:skFt6CMPo
3
部室から出て学校をあとにすると、天使たちが降っていた。
天使たちは天国からそれぞれちがった格好で落ちてくる。
気を付けの姿勢で落ちてくるものいれば、体育座りしているものもいて、天使のくせに涅槃の格好もするし座禅だって組む、セクシーなポーズをとってることとか、羽があるのに手をぱたぱた振っていることもあって、なかには頭から落ちてくるのもいる。
その多様さはまるで、天上でなにか別のことをしているときに急に誰かに突き落とされちゃいましたって感じだけど、ちゃんと途中で羽をパラシュートらしく開いて降ってくる天使もいるのだから、やっぱり自分で選んでそうしているんだろうなと思う。
そのあと天使たちは地面に激突し、潰れる。
どさりって音がする。
ワンピースをびしょびしょに濡らして、高くつりあげて、落とすみたいな。
でも潰れた天使についてはもっとずっといい比喩がある。
強化傘なんてものがなく、天啓を授けられたなんていう言い回しがまだ使われていて、天使に頭をぶつけて死んじゃったりする人がまだいた頃、わたしたちはいつもの4人で帰っていて、澪ちゃんの目の前にちょうど天使が落ちてきたことがあった。
それはひゅっと降ってきて、空と水平の姿勢をとってたから、地面に大の字にぺちゃんこになった。
天使の白い血があふれ出した。それはまるでサスペンス映画で死体から血液がじわじわと広がっていくあのシーンみたいだった。まだ乾ききっていない血はぬらぬらと新しい街灯の青い光を反射した。
なんだかちょっと甘そうだった。
澪ちゃんは気絶した。
澪ちゃんはオバケとかゆーれーとかゾンビとかそういうのがだめなのだ。
そのとき天使はどちらかっていえばそっち側だった。
わたしだって、目の前に来たらけっこうびびっちゃうかも。
ちょうど後ろにムギちゃんが立ってたから事なきを得たけど、すぐに意識を取り戻した澪ちゃんにりっちゃんが大丈夫かと聞くと、
「……ひきがえるの死体みたい」
って澪ちゃんが冗談みたいなことを言ったので、わたしたちはとっても笑ってしまった。
澪ちゃんほどじゃなくてもわたしたちにみんな天使にちょっと緊張してて、そんなときに澪ちゃんが変なこと言うもんだから、お腹を抱えてもう一生笑いが止まらないんじゃないってくらい笑ったのだ。
わたしは笑いすぎて道に座り込み、りっちゃんは隣にいたムギちゃんの背中をばんばん叩き、ムギちゃんもーー普段はそんなことしないのにーーりっちゃんの肩とか背中とか頭とかをかなり強く叩いてた。澪ちゃんは最初自分が馬鹿にされたのかと思ってちょっとむすっとしてたけどすぐに笑いに加わった。
わたしたちはそのまま、天使が歩き出しはじめるまで、ずっと笑い続けていた。
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