過去ログ - オッサン勇者と少女魔族が世界を旅する話
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12:名無しNIPPER[saga]
2016/04/18(月) 01:18:48.31 ID:ZyCwTMFeo
故に王都からの正式な声明はなかったものの、民心の大半は「勇者は魔王を斃したが、魔王との戦いで命を落とした」という結論に傾いていた。

そしてさらに一年後。つまり現在、世界最大の大陸の中央を真っ二つに割る形で人間と魔族は睨み合っている。
平和からは程遠いものであるものの、一歩一歩確実に完全勝利へと向かっているという実感に人々は酔いしれ、王都の中心は束の間の安息を享受していた。
おかげで戦場の最前線から程遠くなった王都は、かつて忘れられていた活気というものに溢れていた。
大通りには、祭りごとがあるわけでもないのに露天商も多く店を構え客引きをしている姿が目に入る。
道行く人々も恐怖に彩られた目に染まっているものはみてとれない。
誰もが他愛無いことに喜びを覚えるように、このかけがえのない日常を甘受するように行き交う。
しかし男と女は人通りの多さに辟易していた。

「人。いくらなんでも多すぎだ。祭事でもねェってのによ。王都が魔族に脅かされなくなったからって人が集まりすぎだろう」

「ニンゲン界がこのようなことになっていようとは。我が主も驚かれるかもしれません」

「ヤツがこんなことで驚く玉かよ」

「それもそうですね。全知全能たる我が主がこのような事態を予測していないはずがありませんから」

歩く二人は憮然とした表情で正面を向いたまま言葉を交わしており、どうみても恋仲同士の会話ではない。
では、兄妹であるかと問われれば、これまた二人の容姿は似ても似つかないし、年齢もかなり離れているように思える。
男は二十後半から三十前半、女は大人びている容姿ではあるもののどことなくあどけなさが残っているせいか十代半ばから後半程度に見えた。
女の見目形に目を奪われ、声をかけようかと逡巡する男たちが幾人もいたが、横の男との関係性を邪推して思いとどまる。
その結果騒ごうが騒ぐまいが結局好奇の視線を集めていた。
注がれる視線に気づいていたものの、二人は気にする様子もなく歩を進める。


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