過去ログ - オッサン勇者と少女魔族が世界を旅する話
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名無しNIPPER
[saga]
2016/04/18(月) 01:23:34.02 ID:ZyCwTMFeo
「どうして、こんな変哲もないものが? 確かに細工はそれなりに麗しいですが」
「いやいや。なんでもない、なんてとんでもない! これはちょっとしたまじないがかかってましてね」
「まじない、ですか」
女は露天商の手のひらから指輪を取り上げるとまじまじと見つめる。
やはり何の魔法の痕跡も残滓も感じない。
「この指輪を番ではめた恋人たちは必ず結ばれる、そんなまじないでさぁ! 恋愛の女神さまのご加護ってわけ!
お二人の喧嘩なんざたちどころに収まっちまいます!」
「ほう。私が知らない、それになにも感じさせずそのようなチカラを付加する魔法以外の技術があるとは。
我が主の見立て通りニンゲンもなかなか捨て置けませんね」
人間? と露天商は疑問符を浮かべたが気にせず商い口を続ける。
「それで、この二対の指輪を互いの指にはめ込む、ってのが相場さぁ。それだけで喧嘩なんかたちどころに収まっちまう!
しかもたったの銀貨五枚! それも今だけ! 明日にはもう値あがっちまってこんな格安で買えるのもう来ない!」
いかがです? と露天商は女の顔を覗き込む。
女は相変わらず興味深そうに指輪を眺めている。
どこにそんな力が隠されているのか真剣に悩んでいる様子だ。
バカらしくなり、男は女に声をかける。
「んなチカラあるわけねェだろ」
「ないのですか?」
「あたりまえだ。お前も俺も魔力を感じてねェんだから、そんなデタラメの口上に付き合うな。時間の無駄だ」
「では、この者は私を欺こうとしたわけですか?」
露天商は突如得体のしれない怖気に襲われ、ビクリと身を竦ませた。
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