1: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:12:07.73 ID:SVTkSqQb0
1944年2月2日。
彼はその時、リパブリック社のテストパイロットとして、XP-72のコクピットにいた。
『はじめまして、パイロット』
「はじめまして、ベイビー」
このような会話があったかどうかは定かではない。
生まれて間もない“ベイビー”はこれより、初の試験飛行に入るのだ。
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2: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:13:03.68 ID:SVTkSqQb0
同社の名機、P-47「サンダーボルト」をベースに試作された高速迎撃機、XP-72。
3: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:13:48.15 ID:SVTkSqQb0
荒野に囲まれたこのだだっ広い自社飛行場の片隅で、誘導員の“回せ”という指示に従い、作業員が慌ただしく機体に取りつく。
4: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:14:32.09 ID:SVTkSqQb0
『ねぇ……怖いよ』
5: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:15:19.79 ID:SVTkSqQb0
薄雲が、あっという間に眼前まで迫る。
6: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:15:57.53 ID:SVTkSqQb0
………………
…………
7: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:16:33.62 ID:SVTkSqQb0
『ごめんね』
8: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:17:26.45 ID:SVTkSqQb0
時は流れ、1944年6月26日。
9: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:18:16.66 ID:SVTkSqQb0
バブルキャノピーの前面で、アメリカンクラッカーのようにはためく異形のプロペラ。
10: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:20:15.60 ID:SVTkSqQb0
陽の光を遮るものはなく、頭を覆う丸い飛行帽には熱がこもっていた。
11: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:21:29.26 ID:SVTkSqQb0
グースの群れを、はるか眼下に望む。
12: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:22:35.89 ID:SVTkSqQb0
「まったく、最高だ」
13: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:23:45.78 ID:SVTkSqQb0
男は自機の斜め前方に、かすかな白い機影を見た。
14: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:25:11.99 ID:SVTkSqQb0
この時、「789km/h」という“レシプロ機の”水平飛行最速記録を叩きだしたXP-72.。
15: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:26:37.64 ID:SVTkSqQb0
白い影の正体……ロッキード社が開発したアメリカ初の実用ジェット戦闘機「P-80」の成功は、既に確実視されていた。
16: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:27:29.56 ID:SVTkSqQb0
新たな空の時代の幕開け。
17: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:28:24.39 ID:SVTkSqQb0
『僕はもう、みんなに必要とされていなかったんだね』
18: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:29:38.30 ID:SVTkSqQb0
こうして、時は流れてゆく。
19: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:31:00.43 ID:SVTkSqQb0
1964年12月22日。
20: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:31:59.50 ID:SVTkSqQb0
大戦後、ジェット戦闘機「F-105」を世に送り出していたリパブリック社に、フェアチャイルド社による買収の手が迫っていた。
21: ◆9l/Fpc6Qck[saga]
2016/04/28(木) 23:32:45.78 ID:SVTkSqQb0
この日、彼が呼び寄せたのは、かつての会社の仲間達。
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