10:名無しNIPPER
2016/05/03(火) 22:37:53.39 ID:G1lrEIoLo
「闇に飲まれよ!」
一日が終わり、事務所を出る前に放った蘭子の台詞は、気疲れからかもはや理解が追い付かなかった。
……闇は何のメタファーだろう。飲まれる?
「お疲れさん。気をつけて帰ってなー」
PCモニターに隠れいていたプロデューサーの顔がこちらを覗き、キーを叩いていた手は宙でひらひらしている。
蘭子は満足そうに部屋を出た。彼らには意味が通じ合っていたというわけか。
隣で茫然としていた幸子と目が合う。おそらく彼女と初めて意見が一致した瞬間だった。
「さすが『瞳』の持ち主といったところかい?」
蘭子の言葉を借りて彼に問う。皮肉などではなく、つい口から出てしまっていた。
「まさか、これでも苦労してるんだぞ?」
冗談めいた調子で返してきたプロデューサーは、しかし嘘をついているようにも見えない。
たしかに同類でもなければ無理からぬ話だが。
ボクとキミが同類であるなら、どうだろう。多少は伝わるんじゃないだろうか。
「同じユニットで活動する身としては、コミュニケーションが取りやすいと助かるんですけどねぇ」
「幸子もコミュニケーション取るの下手な方だろ」
「な、なんてことを! どこに目をつけてるんですかプロデューサーさんは!」
「あはは。飛鳥はどう思う?」
急に振らないでほしい。
隣からは、そんなことありませんよね? と視線で訴えかけられている。どうしたものか……。
「……理解るけど理解らない、かな」
「飛鳥さんまで!? こんなにカワイくて完璧なボクのどこに問題があると仰るんですか!!」
「はいはい、その話は今度にしよう。遅くなるぞ」
「絶対ですからね! もう……行きますよ、飛鳥さん?」
ぶつぶつと文句を漏らしながら退室する幸子を追う前に、プロデューサーへ向き直る。ボクから何を受け取ったのか、首を縦に振ってくれた。
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