過去ログ - 飛鳥「ボクがエクステを外す時」
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15:名無しNIPPER
2016/05/03(火) 23:03:20.69 ID:G1lrEIoLo

「今でも通じないことはある。でも蘭子が蘭子なりに何かを伝えようとしてくれているなら、俺はそれが何なのかわかるために努力する。でなけりゃ俺は、蘭子をプロデュースする資格がないと思ってるよ。同僚からは真面目過ぎだって笑われるけどな」

「理解するまで努力、か」

「じゃなきゃ俺を信じてついてきてもらえない。だろ?」

「……」

 そう、ボクがこうして彼を解っていなかったように、彼にもまた解らないことはある。ヒトであればそんなのは当然で、そんな当たり前を忘れさせてくれたから、つい勘違いしていた。
 彼の目に映る「二宮飛鳥」は、どんなヤツなのだろう。
 気になる。
 まるで別人なのか、それとも限りなくボクに近い何かか。案外それは「二宮飛鳥」より「二宮飛鳥」していたりして。
 ……「二宮飛鳥」するってなんだよ。

「俺なんてそんなもんだ。特別な才能なんてないから裏方にいるし、でも俺が裏方で頑張れば、誰かが輝きを増す。平凡なりにできる精一杯も、報われると嬉しくてさ」

「報われる……それがキミにとっての世界への抵抗なのかもね。ふぅん」

 理解者ではない。誰かを完全に理解するなんて無理に決まってる。理解が出来ないものはそこで思考を停止して、理解出来るものへ興味を移す。それが普通、ボクの嫌いな普通だ。
 ただそれを諦めなかったヤツがいる。それが自分の仕事のためだとしても、楽をしようとすればいくらでもやり様があったろうに端から選択肢にないのだ。
 理解されることを諦めていたボクへと引き合うように現れたのは、理解することを諦めない彼、か。
 とても理に適っていた。

「やはり、キミは他のオトナとは違うようだ。たいしたものだよ」

「お褒めに預かるとは光栄だな。そういうわけで、残念ながら俺は飛鳥の言う「痛いヤツ」でもない、と思う」

「さぁ、どうだろう? キミ自身も同僚に笑われるって言っていたじゃないか」

「それは……うぐぐ。ええ……そうか、俺は痛いのか……」

「……フフ、あはは」

 飾り気のない笑みが零れた。自分でも驚くほどに。
 彼のことが以前よりもっと知りたくなった。理解者じゃなくていい。ボクの知らないキミがいるなら、解き明かしてみたい。
 本当に興味の尽きないヤツだ。
 だからこそ、ボクは此処にいるのだろう。
 ボクの期待していた通りのヤツではない、そうはっきり宣言されたはずなのに、どうしたことかボクの心は哀しみに暮れることなく弾んでいる。
 そんなことはない。ボクらはきっと似ているはずだ。

 鼓動は高く、早く。熱を帯びて脈打ち出す。
 世界に抵抗して報われることのヨロコビは、キミのおかげでよく知っているから。
 これまで与えられてばかりだったボクでもキミと対等になれる方法があるというなら。
 ボクも……キミの期待に報いたい。
 あぁ、そうだ。非日常なんかより、ボクが本当に望んでいたものは、きっと――

「フフーン♪ カワイイボクが一番乗り〜、ってなんだ飛鳥さんが先に来ていましたか」

「天に使えし者よ、我を忘れて貰っては困る……。ククク、煩わしい太陽ね!(幸子ちゃん、私のこと忘れてない……? おはようございます!)」



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