36:名無しNIPPER[saga]
2016/05/18(水) 21:28:36.11 ID:wEJbruLdo
「なぁ、キミの目に映るボクは揺らいでいたりしないだろうか?」
「飛鳥は飛鳥だろ? 俺が知ってる飛鳥だよ」
「知ってる、か。本当にキミはボクのことを知っているのかい?」
「そう返されると言葉もないな……。まだ俺の知らない飛鳥もそりゃいるんだろうけどさ」
「……質問を変えよう。キミはキミ自身のことをどれ程知っている?」
「俺のこと? 俺のことは俺が一番よく知ってるけど、そうだなあ……。案外知った気になってるだけなのかもな、昔の俺は将来アイドルのプロデューサーやってるなんて想像すらしてなかったし」
「ボクだって同じさ。アイドルをすることになるなんて思ってもみなかった。そう、同じ」
同じ、を強調して間を置いてみる。
寒さを思い出す前に、次に続ける言葉を探して。
「ボクはね、プロデューサー。変わっていくセカイにそれまでのボクが置き去りにされていないか、何故だか不安なんだ。今ここにいるボクは、キミと出会った頃のボクといえるのか……。ボクはボクで在り続けられているだろうか」
「んー……月並みなことしか言えないけど、人は変わるものだよ。俺だってそうだ。変わらない人なんていないさ」
「そう、だね。キミは正しい。あぁ、まごうことなき正論だ。変わらないヤツなんていやしない」
ボクだって最初からこういうヤツだったわけじゃない。そして、こういうヤツになったから得られたものもある。
今はそれを手放したくないから、「二宮飛鳥」の仮面をつけているボクは彼に問う。
「それでも、ボクがボクでなくなってしまったら……キミはどうする? 先なんて見えない暗闇の中で、進むべき道はおろか自分のことすら見失ってしまったボクを、キミは……置いていってしまうのかな」
伝えたいことの全てを伝えられたとは到底思っていない。自分でもよく解っていないのだから、感覚的にならざるを得ない。
要領が悪くても、拙い言葉でも、彼なら理解しようとしてくれる。それだけを頼りに、ボクは彼の返答を待つ。
難しい顔をしながら、それでも逃げるような真似はせず、やはり彼はボクにまっすぐ向き合ってくれた。
「その時は……見つけてみせる。なーに、俺とお前は一度こうやって出会えたんだ。飛鳥が自分を飛鳥じゃなくなったと思っても、どこかに必ず飛鳥がいるはずだ。それを俺は見つけてみせるよ」
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