過去ログ - 飛鳥「ボクがエクステを外す時」
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44:名無しNIPPER[saga]
2016/05/18(水) 22:02:12.51 ID:wEJbruLdo

「……彼に掛けるつもりかい?」

「今日はプロデューサーさんもオフのはずですしね。時間もあまりないことですし、カワイイボクからのお願いなら何よりも優先して聞いてくれるはずです!」

 そうして何度も留守番電話サービスに取り次がれ気を落とした幸子を、なんとか慰めようとする蘭子は自分が渦中の人であるのに気付いていないようだった。
 なかなか通じない蘭子なりの励ましの言葉は、逆に幸子へ追い討ちをかけてしまってはいないだろうか。
 さすがに静観している訳にもいかず、ボクは素朴な疑問を投げつけてみた。

「オフのプロデューサーに電話なんて掛けていいのかい? 緊急の案件ならともかく私的な用事でさ」

「ボクにとっては緊急なんですが……。そうでなくとも別に構わないんじゃないですか?」

 そういうものなのか。

「プロデューサーさん、オフの日も結構ボクたちに付き合ってくれますよ。お買い物ですとか、遊園地なんかにも連れていって貰えましたしね。やっぱりボクがカワイイからでしょうか、フフーン♪」

「ゆ、遊園地……!?(ゆ、遊園地……!?)」

 どちらの蘭子が喋ったのか判別しにくいということは、蘭子もプロデューサーの付き合いの良さを知らなかったのだろう。いや、蘭子なら知っていた上での反応かな。
 ……いいのか? アイドルとプロデューサーが仕事でもなく遊園地って。買い物もそうだけど。

「そこはまぁ、ボクもちゃーんと気を付けてますよ。溢れ出るカワイさを抑えるのに苦労します。カワイイボクがもっと世間に知れ渡ったら、お出掛けまではさすがに厳しいでしょうねぇ」

「ふぅん。蘭子はどうだい? オフに彼と過ごしたことは」

「ふぇっ、私!? あの、えっと……」

 その慌てふためきように答えがもう出てしまったようなものだが、蘭子にも詳しく聞いておこう。後学のために。

「うぅ〜……。い、一度だけ、日頃の感謝の気持ちを込めて、手作りのお料理を食べてもらったことなら……」

「手作り料理ですか……! 日頃の感謝の気持ちとは、意外とやりますね。蘭子さん」

「だってだって、他にどうやって声を掛けたらいいのかわからなかったからぁぁ……」

 テーブルに突っ伏した蘭子はすっかり耳まで赤く染まっていた。
 蘭子のことだ、何か大きな理由でもなければ休日を一緒に過ごそうなんて誘うこともままならないだろう。彼女がそれを密かに望んでいるかどうかは別として。
 ……。オフの日に彼と会うなんて考えたこともなかった。
 仕事ではないのだから、アイドルとして会うのではない、よね。もちろん彼のこともプロデューサーとして会いにいくのではなく。
 では一体、彼女らは誰として、誰でもない彼と共に時を過ごしたというのか。


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