過去ログ - 飛鳥「ボクがエクステを外す時」
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71: ◆KSxAlUhV7DPw[saga]
2016/05/31(火) 22:57:47.87 ID:D9m/pSOOo

「私もね? 叶わない、叶っちゃいけないってことは承知してるよ。誰かを好きになっちゃいけない。知ってたはずなのに、知ってたからって、この気持ちは抑えられなかったと思う」

「蘭子……」

「私は、この気持ちもあの人がくれたものなら、大事にしていたいんだ。私が”私”であることを捨てずにいさせてくれたから、この気持ちだって手放したくない。それにあの人のことだから、もしかしたらこの気持ちにだって……なんて」

 自分の秘めた想いに気が付いて、受け入れてくれるのを期待する、ということか。
 迎えに来てくれるのを待ち続ける。蘭子らしい選択に思えた。

「欲張りさんですねぇ。まぁボクも、そういう考え方は悪くないと思いますけどね」

「だってぇ……。そういう幸子ちゃんは、どうしていきたいの?」

「ボクですか? ボクは……今まで通り、といったところでしょうか」

 混じり気のない微笑を浮かべた幸子を見て、既に心が決まっていることを窺えた。
 こんなところでもボクは二人に置いていかれそうだ。

「今まで通り、ボクが一番カワイイってことをプロデューサーさんと一緒に証明していきます。すぐ側に一番カワイイ女の子がいて放っておける男性なんていないでしょう? プロデューサーさんだってきっとそうです!」

「……それで、一番になって彼を籠絡出来たとしたらどうするんだい?」

「その時は……そうですねぇ? ボクが一番だってことを証明しちゃったら、アイドルでいることに拘らなくてもいいかもしれません。それならボクが誰とお付き合いしようと関係ありませんしね!」

「フッ、清々しいな。それもまた一つの答え、か」

「幸子ちゃん、カッコいい!」

「蘭子さん。褒めてくれるのはいいんですけどボクはカワイイのであってカッコいいは……でもたまにはあり、ですね。そんなボクもきっとカワイイことでしょう!」

 迎えが来るのを待つことを選んだ蘭子、そして自ら振り向かせることを選んだ幸子。
 気付いてしまった初めての感情にボクが振り回されている間にも、これだけ差をつけられている。彼と過ごした時間でも劣るボクは、自分の方針くらい早く見定めなければ追い付けなくなりそうだ。

「飛鳥ちゃん、ゆっくり決めていいんだよ? 私、本当はどうしたいかなんてわかってないし、でも幸子ちゃんみたいに大胆なことも私には出来ないし……」

「……また見透かされたかな。心遣いありがとう、蘭子。……そんなにわかりやすいのかな、ボクって」

 さすがにボクの心の機微を感じ取り過ぎではないだろうか。
 顔に出てる?

「ふふっ、そうじゃなきゃあんなこと聞きに行ったり出来なかったかなー。それでも違ってたらどうしよう、って心臓バクバクしてたけどね。暗くて助かっちゃった」

「ボクだって、あの闇の中に誰かが光を灯しに来るとは思ってなかったよ」

「? 何のお話をしてるんですか?」

「幸子の部屋に来る前、ちょっとね。今日の立役者というか、こんな流れになった元凶? が蘭子なんだ」

「元凶!? うぅ、そんな言い方しなくても……」

「……ボクも今日のことは忘れられそうにありませんね。こ、こういうお話っていわゆるガールズトークってものなんでしょうか?」

 この面子によるガールズトーク、か。
 彼が聞いたら笑うかな。らしくない、って。
 ……らしくない、よね。自分でさえ、誰かを好きになった自分なんて想像も出来なかったのだから。


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