過去ログ - 飛鳥「ボクがエクステを外す時」
1- 20
93: ◆KSxAlUhV7DPw[saga]
2016/06/11(土) 23:13:20.01 ID:2YZyh0JIo

「どんな飛鳥も、飛鳥だよ」

 ……?
 どんなボクも、ボク。

「どういう、意味?」

「まだ14歳なのに、それとも14歳だからなのか、知ってますって顔して物を言う飛鳥も。ずっと俺以外の誰かと関わろうとしなくて年の近い子が苦手なのかと思ってたけど、あいつらと仲良くなって楽しそうにしている飛鳥も」

 ボクという人間の変遷を、見守ってくれていた彼は語った。

「クールなつもりでいてちょっぴり顔に出やすい飛鳥も。悩みがあれば考え過ぎなくらいに悩んでいた飛鳥も。苦いの得意でもないのに無理してコーヒー飲んでた飛鳥も」

 見なくていいところまで見ているんだな。
 ……ずっと、見ててくれてはいたんだ。

「そして、俺が理解してやれなくて……泣いていた飛鳥も、全部だ。全部が二宮飛鳥って名前の女の子なんだよ。俺はその、全部ひっくるめて飛鳥のことを知りたい」

 彼にとって、「二宮飛鳥」の仮面をつけたボクこそが二宮飛鳥という存在だと思っていた。
 でもそれは……ボクの方こそ思い上がりだった、というわけか。
 どんなボクもボクで、ボクのことを知りたい。そうはっきり口にしてもらえて、勝手に自分を縛りつけていた枷はもう、影も形も無くなったかのようだ。
 胸がすっと軽くなり、自由に躍り出している。彼の前で無理をしてでも「二宮飛鳥」である必要はなくなったんだ。
 もう、「二宮飛鳥」という仮面は彼と共に歩むこのセカイでは不要なのかもしれない。

 無邪気に飛び跳ねている心を抑えつけて……最後に、これだけは聞いておこう。
 そうまでしてボクを解ろうとするのは、やはり彼がプロデューサーで、ボクがアイドルだから、なのだろうか。
 ボクとは仕事の上で成り立つ関係、なのかどうかを。

「ボクのことを知りたいってのは、ボクをプロデュースするため、かい?」

「もちろん。でも……何というか俺、本当は怖いんだ。そのための努力をしたいのに、お前達のことを知ろうとすることが、怖くもある」

「知ることが、怖い? 誰かと解り合うことに怯えている?」

「怯える、か。ああ、その方が近いな」

 背を向けたまま彼と言葉を交わしているせいで確認することは出来なかったけれど、何となく今の彼があの時みたいに遠く空の彼方を見つめている気がした。
 彼は話してくれた。
 ボクが一番聞きたかった物語、彼についての物語を。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
112Res/208.62 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice