13:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:22:54.60 ID:1EMEuCfU0
本当は、これは私の勘違いだなと、私は分かりはじめてていた。
基本的にあいつは嘘がつけない。
あいつは嘘をついたり、隠し事をしている時はいつも視線をそらすから、まず簡単に分かってしまう。
14:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:24:10.15 ID:1EMEuCfU0
それでも、なんとなく許せないのは、あいつが私の気持ちを全く分かってくれへんこと。
いきなりの女性からの電話。
嫉妬したり、疑ったりするのはごく自然なことじゃない。
15:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:25:14.34 ID:1EMEuCfU0
「男の人って、信じられないものね」
私は笑いだしそうになるところを見られないようにあいつとは反対側を向くと、わざと肩を落としてそう言った。
「男の人って……、じゃあ、俺のことも信じらんないってことか?」
16:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:26:12.26 ID:1EMEuCfU0
言うに事欠いて、あいつはとんでもない事を言い始めた。
「そう言えば、この間だってかなり帰りが遅かったよな」
「あれは仕事が長引いて……」
17:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:26:46.77 ID:1EMEuCfU0
怒った。
私のことが信じられないなんて、それだけは許せない。
「私はあんたみたいな浮気者じゃないわよ」
18:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:27:13.71 ID:1EMEuCfU0
思い返してみて、 私も、というか私がきっといけなかったと思う。
でも、気がついてくれたっていいのに。言葉の裏側の想いに。
そう思うのは、私の甘えなのかしらね。
19:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:28:04.29 ID:1EMEuCfU0
いいかげん、息のつまるような空気に耐えかねて、遂に私はこの部屋から退却することに決めた。
私は壁ぎわに寄って、ワードローブからコートを取り出した。
「どこ行くの」
20:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:29:02.68 ID:1EMEuCfU0
私は、コートとお揃いのマフラーを手に取り、それを首にまわしながら、
「あんたこそ、あの人の所でも、行って来たら」
と言った。
21:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:30:01.29 ID:1EMEuCfU0
「どうして分かってくれないんだよ」
必死の表情で、あいつは言う。
許してしまいそうに心が揺れるけれど、ここは我慢。
22:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:31:20.04 ID:1EMEuCfU0
私だって悪いということは分かってた。
それでも心の底で、あいつに引き留めて欲しいという気持があった。
けれど、無理みたい。
23:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:32:33.98 ID:1EMEuCfU0
マンションホールから扉の向こうを眺めた。
昨夜からの雪は既にやんで外は抜けるように青く、それでいてぼうっとしてとらえどころの無いような表情を見せいていた。
一面に白い雪が辺りを埋め、日常を覆いつくしていて、まるで知らない街に来たような錯覚を覚えるほど、いつもとは違った光景に見えた。
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