37: ◆ULuwYLs/ds[saga]
2016/05/05(木) 23:04:59.85 ID:xJU0s9Q00
「大丈夫、大丈夫。気負いすぎちゃ駄目だって」
急に聞こえた声に驚くと、周子さんが中身の沢山つまったビニール袋を両手に持って事務所へ入ってきていました。
「おかえり。周子」
「ん。お茶請けの補充はこのぐらいあれば十分でしょ?」
ああ、助かったと言いながらプロデューサーさんはレシートとビニール袋を受け取ります。
「文香ちゃんなら大丈夫だって、肇ちゃんもそう思うでしょ?」
周子さんの言葉に肇さんも深く頷きます。
「私は文香さんと一緒に、ステージに上ってみたいです」
きっと自分だけでは出せない色があるからと。続け、よろしくお願いします。と頭を下げられてしまいました。
レッスンを一回、一緒にやっただけなのに、話がここまで進んでしまうとは思いもよらず。困ってしまいます。
その様子を見兼ねたのか、周子さんが一枚の写真を取り出しました。
「昨日、皆でお茶会をしてたときに、密かに椿さんが撮ってた写真なんだけどさぁ」
そこに写っていたのはみちるさんから貰ったパンを頬張る私でした。
その表情は……笑顔。
あの時、自分では気付かなかった……そらさんや朋さんの様な満面の笑みとは言えませんが、口角が上がり、目は細めています。これが私の笑顔。
「アイドルらしくなんて二の次でさ、やってみたいことやってみようよ。文香ちゃんだってこんな表情が出来るんだからさ」
周子さんがそう言って笑顔を向けます。
気づくと肇さんが、私の手を両手で包み。
お願いします。と今度は目を見つめながら言葉を放ちます。
嗚呼、その目はなんだか反則な気がします。
プロデューサーさんの、じゃあ決まりだなという声に、肇さんの笑顔がより一層輝きました。
鏡を見ていないので分かりませんが、この時の私の表情はきっと笑顔だった筈です。
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