過去ログ - 「路地裏で猫を撫でたら、不思議な場所へ着いた」
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名無しNIPPER
[sage saga]
2016/05/13(金) 22:40:36.68 ID:adlua01f0
「やぁ、美しくうら若き乙女よ。紅茶でも飲むかね」
目を開ければ猫。
そいつは確かに口を開いて、手に持ったカップを掲げて紅茶を勧めてきた。
神崎 篠(かんざき しの)は心臓が止まりそうになった。
猫にしては随分と大きい。
黒いローブの下からでも主張しているでっぷりとしたお腹に、中世のヨーロッパを思わせるくるりと巻いた口ひげが何とも愛らしい。
少なくとも危険ではない事は悟ったが、篠は状況が掴めず辺りを見回した。
「ここはワシの家じゃよ。そこの戸棚にあるのはほれ、冬用のジャムの蓄えじゃ」
「あの……」
猫が立って喋っているだけでも十分怪奇現象だが、彼女は色々をぐっと押し殺し、口早にまくし立てた。
「ここはどこ?!私、あれ?!さっきまで猫を……」
「ははは、まあ掛けたまえ美しくうら若き乙女よ、もてなそう。ワシも久々の客人で心がうきうきしているのだ」
「ねえ、ちょっと!」
「はは、細かい事はいい、いい。今君の紅茶を取ってこよう。秋のボーデン樹の蜜を入れようね、きっと気に入る」
額に汗を浮かべた篠とは対照的に、老猫は穏やかだった。
「ここ……どこなのぉ……?」
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