38:墓堀人[saga]
2016/05/23(月) 11:50:26.36 ID:QQKHlK4R0
どこをどう歩いたのだろう。自分でも良く覚えていない。
二人のキスを見てしまった私は逃げるようにその場を去り、気が付けばよく知らない大通りに立っていた。
週末の雑踏を行きかう人々は憂鬱な雨にジッと耐えているか、雨を吹き飛ばさんばかりの笑顔を浮かべた人の2種類だけで、傘も差さずに雨を受け入れているのは私だけだった。
濡れて冷え切った自分の両手に視線を落とす。
私ってば本当にダメな女。失恋一つでこんなにも乱れるなんて。
そうやって空虚な自嘲を繰り返しては、何度も訪れる感情の波に流されぬよう必死に耐えていた。
そんな失意の波に揺られながら、見知らぬ大通りをふらふらと歩く。大粒の雨はいまだ上がらず、雑音だらけの世界に彩りを添えていた。
周りを見れば仕事帰りのサラリーマンや恋人達が続々と目に入って来る。先ほどの光景を嫌でも思い出させるが、それでも今暗い路地を歩く自身は無かった。
そのまま闇に飲み込まれそうで、怖かったのだ。
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