過去ログ - 荒木比奈「最初の一歩が踏み出せなくて」
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13:名無しNIPPER[sage saga]
2016/05/26(木) 23:43:01.44 ID:SxnKCCpl0


「美波ちゃんは大学生っスよね? どうして、アイドルになろうと思ったんスか?」

 比奈の言葉に、今度は美波の手が止まる番だった。
 その瞳に一瞬、確かに浮かんだ苦悩の色に、比奈は気付いてしまった。

「あ、いや、別に答えたくないなら良いんです。出会ったばかりの人間にいきなりこんなこと聞かれたら、イヤっスよね」

「え? ああ、違うんです。別にイヤだなんて思ってません。ただ――」

 そこまで言ってわずかに口籠もり――意を決したように、言葉を紡ぎ始めた。

「アイドルになろうって思ったのは、ただ、自分の可能性を広げてみたかったんです。
 自分に何が出来るのか分からないから、色々なことをやってみようって」

 そう言えば、と比奈は思い出した。以前流し読みした雑誌に偶々載っていた新田美波の特集記事に、趣味は資格取得とあったハズだ。

「資格を取るみたいに、っスか?」

「はい。実際、アイドルって仕事では他では体験できない経験が色々出来ました。ステージに立って、歌って、踊って、お芝居もしました。
 インタビューを受けて自分の考えを口にする機会も沢山頂きました」

 良い話、に聞こえる。挑戦する機会を求めてアイドルの世界に飛び込んで、求めたものをきっちりと与えられた。何も問題がない、理想的な――

「――今度、所属が変わって、C-BLUEを出て、新しいプロデューサーさんのところに行くことになったんです」

「そうなんスか? あれ? でも確か美波ちゃんって、C-BLUEに来る前はまた別のプロデューサーさんの担当だったとか……あ、その人の所に戻る、とかっスか?」

「……いえ、その人とはもう、二度と会わないです」

「え?」


「……C-BLUEに配属される前、当時の担当だったその人に、その――セクハラ、されそうになって」


 



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