114:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 01:37:25.35 ID:49W9hqJ1o
「おお、やっと主役2人が戻ってきた」とは渋谷部長の言葉である。
凛はそんな父の白々しさにうんざりした。
主役を忘れて話し込んでいたのは誰だとでも言いたげな表情である。
改めて乾杯の音頭をとると、凛はまた下世話な話が続くかと思い嫌になったが、流れは予想外な方向へ進んだ。
楓「蘭子。お誕生日、おめでとう」
そう言って楓が取り出したのは、真っ赤なリボンでラッピングされた一冊の本だった。
楓に促されるままプレゼントを手渡され、最初は何のことか分からずにいた蘭子も、恐る恐るリボンを解いて中を見ると、その表情に閃いたような理解と歓喜の色を爆発させた。
それは、ある往年の有名作家が晩年残した画集である。
蘭子はその希少さと価値を知っていた。同時に、欲しいと願っても自分には決して手の届かないものだという事も。
美優「蘭子ちゃん、私からも……これ」
ほとんど困惑に近い喜びの中で、次に蘭子の手に置かれたのは金と銀の装飾が派手な重たい箱だった。
黒くざらついた表面には『Rosenburg Alptraum』と刻まれている。
中には、蘭子があの時欲しがっていた漆黒色の羽ペンとレターセット、その他凝った作りの小物が入っていた。
蘭子は今日、自分がこの世でもっとも幸せな存在なのだと思った。
そして、この喜びを自分だけが独り占めするのは良くないことだと思った。
しかし蘭子は他人と幸せを共有する方法が分からなかった。
だから、とにかく今はこの喜びを全力で表現しようと思った。
それは結果として、周りの人たちすべてを幸せな気持ちにさせた。
こうした蘭子の初々しい喜びを目の当たりにして、あの凛までもが優しい感情を心の裡に蘇らせた。
「小梅ちゃんと一緒に選んだんですよ」
「蘭子ちゃんは絵を描くのがお好きなんですってねえ」
「ほお、すごいな。ドールは創造分野が苦手と聞いたことがあるが、そうとも限らないんだなあ」
「蘭子ちゃん、良かったですね!」ニコニコ。
「この本? これはありすちゃんに協力してもらって探したんですよ。後でお礼を言わなきゃいけませんね」
云々。
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