115:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 01:38:15.05 ID:49W9hqJ1o
凛は考えを改めた。
この蘭子というドールは愛されるためにここに存在しているのだと悟った。
羨ましいと思った。
この血の繋がっていないはずの3人には、家族よりも家族らしい絆があった。
急に、自分だけがこの幸福な空間から取り残されたような気がした。
凛がいつも立ち返って考えるのは卯月のことである。
己の笑顔の価値も分からず、己の幸せも求めようとしない哀れな人形のことを考えると、凛はそんな卯月に何もしてやれない自分を呪い、そして卯月の哀れさに怒りすら覚えたりした。
凛のこうした心理には、真実をそのまま語っている聡明さが備わっていると思われるだろうか?
実際、これらの感情のメカニズムは、ある種の若さと未熟さがもたらす誤解によるものである。
つまるところ、凛の家族にはその家族にしかない絆が、卯月には卯月の幸福が、凛にはまだ見えない場所にまさしく存在していたのだった。
幸福より不幸に親しみやすい凛の年齢は、自分が恵まれていない人間だと錯覚しがちである。
そして、この誤解は蘭子にとって都合が良かった。
凛は、この人たちなら卯月を本当に理解してくれるかもしれないと考えた。
敵意はすっかり消えて無くなっていた。
卯月「……凛ちゃん?」
凛「うん?」
卯月「どうしたんですか? さっきからボーっとして」
凛「いや……なんでもないよ。それより卯月、蘭子の事、どう思う?」
卯月「とても可愛らしくて、綺麗な人だなあって」
凛「うーんと、そうじゃなくてさ……羨ましいとか、思ったりしないの?」
卯月「え? 羨ましい……って、なんですか?」
凛「……そっか。卯月は、そうだよね」
卯月「?」
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