2:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:34:58.43 ID:6D4QUdRpo
不満げに見つめる美優をよそに、楓はその大きな箱を重そうに持ち上げた。
楓「あら。このままじゃ私そっちに行けませんね」
アパートの狭い玄関を高さ160cmはありそうな直方体が占領した。
3:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:35:46.97 ID:6D4QUdRpo
思わず悲鳴を上げてしまいそうなほどよく出来た人形である。
「っ!」
驚いて声が出そうになるのを手で押さえる。
4:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:36:15.62 ID:6D4QUdRpo
美優は何か言おうとしたが、すぐに呑み込んで、代わりに大きく溜息をついた。
楓が勤めている会社の非常識は今に始まったことではないのだ。
まともそうな外見をしているわりに中身が適当でいい加減なところは楓とそっくりである。
突拍子もない事で驚かされるのはいつものことだった。
5:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:37:19.43 ID:6D4QUdRpo
……楓がシャワーを浴びている間、美優はリビングのソファに行儀良く座っている蘭子をじっくりと眺めていた。
生きているみたい、と思う。
というよりも、最初にこの人形を"人形"だと判断したのが不思議なくらい、見た目は人間の子供そのものだった。
6:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:38:08.93 ID:6D4QUdRpo
(関節があるってことは、つなぎ目とかもあるのかしら)
指先や肘、肩を触って調べてみたが、それらしいパーツは見当たらない。
そうして蘭子をぺたぺたと触っていると、不意に、美優は気づいてしまったように顔を赤らめた。
7:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:38:41.56 ID:6D4QUdRpo
寝巻きに着替えた楓はソファに寄りかかって蘭子の髪を弄っている。
楓「……もちろん、下半身も全部女の子ですよ」
美優「へ〜、本当によく出来てるんですねえ」
8:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:40:37.66 ID:6D4QUdRpo
楓「これはwebのアクセス認証用紙ですよ。ちょっとパソコンお借りしますね」
デスク型の量子基盤は旧世代の電子コンピュータと区別してQPC(Quantum Personal Computer)と呼ぶのが通称だが、現代においてPCやパソコンと言えばこの量子基盤を指す場合が多いため、わざわざQPCと呼びにくい名称を使う人は稀である。
またQuantumとあるが、大戦以前にあった量子コンピュータのモデルとは全く異なるという事を付け加えておく。
9:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:41:42.66 ID:6D4QUdRpo
◇ ◇ ◇
翌朝、楓は美優の小さな悲鳴で目が覚めた。
楓「どうかしましたか……?」
10:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:42:26.20 ID:6D4QUdRpo
美優「な……な……!?」
楓「あ、目を覚ました」
楓はニコニコと微笑みながら蘭子を正面から見つめ返した。
11:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:44:01.89 ID:6D4QUdRpo
食卓を3人で囲んで、1人は朝食を美味しそうに食べ、1人は挙動不審にチラチラと横を見やりながら危なっかしく箸を運び、1人は椅子に座っ
たままじっと目を伏している。
美優「ら、蘭子……ちゃん?」
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