93:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:44:51.98 ID:49W9hqJ1o
飛鳥は手を動かすのを止め、初めて蘭子をまじまじと見つめた。
美優は慌てて翻訳しようとしたが、今回は少し難解であった。
なんとなく無礼なことを言ったような気がしたので、謝ろうとした瞬間、
飛鳥「……へえ。キミのセカイにはそんな風に共鳴したのか」
ニヒルな笑いを口元に浮かべるのだった。
表情こそ冷めているが、とても嬉しそうだった。
蘭子「『共鳴世界の存在論』……かの悪魔の囁きが如く綴られた言の葉の真意、そして魂を打ち焦がすような黄泉の幻影、我が瞳に狂いはなかった」
ちなみに『共鳴世界の存在論』とは飛鳥のホームページ、個人サイトのことである。
飛鳥「キミにはボクの瞳に映るものが見えるとでも?」
蘭子「共鳴こそ真の歌……其方が教えてくれたのです」
飛鳥「参ったな……」
全然参ったように見えないのである。むしろ喜びを隠し切れないといった風であった。
2人の会話はヒートアップし、一人当たりの制限時間が過ぎても尚、会話が止まる気配がなかった。
美優「あ、あの……すみません、もうそろそろ……ほら、蘭子ちゃんも」
係員に注意されて蘭子を引き剥がそうとするが、2人は最後まで意味不明なやり取りを繰り返した。
飛鳥「キミとはまたいつか巡り逢えそうな気がするよ。それがセカイの選択した運命なら、ね」
別れ際、飛鳥が握手を求めるように手を伸ばした。
舞い上がってすっかり忘れていた蘭子は、震える手で固く握手し、そして名残惜しそうにその場をあとにするのだった。
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