過去ログ - 岡崎泰葉「十年後の私と十年前のあなたへ」
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2:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 19:56:41.45 ID:A+Nn5pwS0
 喫茶店。

「……少し、悪いことをしてしまったかもしれませんね」

 コーヒーを注文してすぐに漏らした私の言葉にPさんは不思議そうな顔をしていた。そんな彼に私はふふっと微笑み、
以下略



3:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 19:58:03.43 ID:A+Nn5pwS0
「そう言えば、今日は何の仕事だったんだ? 俺は……と言うか、あいつはちょっとしたバラエティ番組だが」

「私もそうですよ」

「泰葉が? 何かの番宣か?」
以下略



4:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 19:58:43.71 ID:A+Nn5pwS0
「まあ、確かにまだまだ粗は見えますが……」

「本当にまだまだなのかよ」

「でも、アイドル時代や舞台時代に積んだ経験が演技に活かされていて、とても良いと思います。『スター女優』というのは彼女のようなことを言うんだろうな、って」
以下略



5:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 20:23:49.77 ID:A+Nn5pwS0
 そんなことを話していると注文したコーヒーが来た。私は砂糖とミルクを入れるが、Pさんは入れていない。……そう言えばそうだったな、と思う。それを見たアイドルが真似をして、苦い苦いと言っていた光景を思い出す。

「……そう言えば」

「ん?」
以下略



6:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 20:30:25.87 ID:A+Nn5pwS0
「でも……あの頃の私も、間違ったことは言ってないと思います。芸能界は確かに華やかなだけの世界ではありませんし……パレードが造り物だってことも事実です。ただ……芸能界は華やかところも確かにあって、パレードは造り物だからこそ、良いものなんだと思います」

「造り物だからこそ良いもの……か。それは?」

「造り物というのは、人が造った物、ということですよね。それはつまり、人がパレードを造ることができるということで……だからこそ、それは素晴らしいことなんだ、って、今なら思うことができます」
以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 20:50:10.25 ID:A+Nn5pwS0
「Pさん」

「なんだ?」

「ありがとうございました」
以下略



8:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 20:50:41.65 ID:A+Nn5pwS0
 それから、私たちは何も話さなかった。何も話さないまま、ゆっくりコーヒーを飲んだ。

 コーヒーを飲み終えてからも沈黙は続いた。それを破ったのはPさんだった。

「そろそろ、出ようか」
以下略



9:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 21:12:07.49 ID:A+Nn5pwS0
 それに……私はスマートフォンを取り出して、ある人に電話をかける。

「今、大丈夫ですか? ……はい、すみません。ちょっと、昔のプロデューサーと会って……はい。そういうことです。……わかりました。それじゃあ、そこに向かいます。はい。ありがとうございます」

 私にも、彼にも、今がある。未来がある。
以下略



10:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 21:26:59.43 ID:A+Nn5pwS0
 だから、もしも十年前のあなたに何か伝えることができるのなら……これだけを伝えたい。

 私は、今、幸せだよ。

 Pさんと出会って……Pさんと別れて。
以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 21:43:43.51 ID:A+Nn5pwS0
 そんな時、スマートフォンが振動した。未央さんからの電話だった。

「未央さん? ……えっと、私、これからマネージャーさんと……マネージャーさんも一緒に? いいんで……ああ、そうですか。わかりました。それじゃあ、一緒に行きますね。はい……はい、わかりました。では、また後で」

 ふぅ、と私は息をついた。まったく、未央さんったら……。
以下略



12:名無しNIPPER[saga]
2016/06/12(日) 21:44:10.13 ID:A+Nn5pwS0
終わりです。ありがとうございました。


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