2: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/06/14(火) 21:34:43.31 ID:kuIBCr7H0
――あの日の事は、今でも鮮明に思い出すことができる。
3: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/06/14(火) 21:35:37.31 ID:kuIBCr7H0
―――
――
―
4: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/06/14(火) 21:36:59.12 ID:kuIBCr7H0
そんな思い籠めて、私は歌う。
「それでは次の曲、聞いて下さい……『Absolute NIne』」
――未来に響かせて
5: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/06/14(火) 21:37:58.31 ID:kuIBCr7H0
歌い出しが終わり、曲が間奏に入ったその瞬間。
「イェーイ! 皆、盛り上がって行くよー★」
6: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/06/14(火) 21:38:28.83 ID:kuIBCr7H0
打ち合わせの時も、リハーサルの時でさえも。一切聞いていなかった、完全な不意打ち。
観客の人々も、一瞬のどよめきの後、猛烈な歓声を上げる。
間奏は、もう猶予が無い。二人は私にウィンクだけして、歌い始める。
私もそれに負けじと、心を籠めて、歌う。音程がずれないように、必死になりながら。
7: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/06/14(火) 21:39:04.14 ID:kuIBCr7H0
曲が終わり、息を切らせながら観客席を見る。
突然のゲストに、ファンの皆のテンションは最高潮に達していた。
私自身、音がズレないように必死ではあったけど……最高のパフォーマンスができたと、そう思う。
「……ありがとうございました。ちょっと、私自身びっくりしちゃって音を外しそうになっちゃいましたけれど」
8: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/06/14(火) 21:39:42.22 ID:kuIBCr7H0
こんな事を企画するのは、一人しかいない。
ちらりと舞台袖に目をやってみれば、そこには、サムズアップしているプロデューサーが……Pさんが、いた。
もう。本当に、困った人。
「でも本当に、来てくれてありがとう、二人とも。それじゃあ一応、自己紹介、お願いできるかしら」
9: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/06/14(火) 21:40:28.86 ID:kuIBCr7H0
しゅん、として見せると、ファンの皆さんの笑い声とは対象的に、凛ちゃんは微妙そうな表情を浮かべている。
「それ、他の皆の前で言ったら怒られるよ」
「ホント、楓さんの若さは反則だよねー。スキンケアとか、どうしてるの?」
10: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/06/14(火) 21:41:11.16 ID:kuIBCr7H0
あれから、凛ちゃん達をバックダンサーに、時にバックコーラスに、何曲かを歌った。
Nocturne、つぼみ、Were the friends!、Nation blue……その他にも、色々な曲を。
それはまるで、私のアイドル人生の集大成のようだった。
「……さて。寂しいですけれど、とってもとっても寂しいし、哀しいですけれど、そろそろお別れの時間となってしまいました」
11: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/06/14(火) 21:41:48.90 ID:kuIBCr7H0
「このライブの告知の時にお伝えしたように……私は、今日限りでアイドルを、芸能界を『卒業』します」
……そう、私は今日、アイドルを『卒業』する。
12: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/06/14(火) 21:42:38.61 ID:kuIBCr7H0
モデルのままだったら、きっと体験できなかった世界。
一歩踏み出さなかったら、味わえなかっただろう煌びやかな世界。
……あの人が見つけてくれたからこそ、支えてくれたからこそ、楽しめた世界。
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