21:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:57:21.38 ID:sf9XWsg90
「さ、そろそろ時間ですよ。もう出なきゃ飛行機、間に合わなくなります」
「おっと、本当だ。じゃあ、もう行くな」
「はい。あ、外まで見送りとかはしないので、ここで」
22:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:57:53.54 ID:sf9XWsg90
追い出すように、平気な顔をして手を振って見送る。
玄関ドアが少しずつ閉まる。ゆっくり彼の姿が小さくなり、やがて完全に見えなくなる。
一瞬だけボーっとしてしまう。頭を振って無理やり意識を取り戻して、部屋に戻った。
23:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:58:38.31 ID:sf9XWsg90
「もしもし、楓さんですか? 今お電話大丈夫でしょうか?」
「私ですか? ええ、何もありませんし、大丈夫ですよ」
「ふふ、変な楓さんですね」
24:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:59:11.21 ID:sf9XWsg90
「……」
「お待たせしました。やっぱり5箱なんてあっという間ですね」
「はい。おかげさまで、だいぶ部屋がすっきりしました。余計なものがなくなったので、とってもいい気持ちです」
25:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:59:49.14 ID:sf9XWsg90
「だって。もう遠慮するような間じゃないですから」
「ホントに。遠慮せず、ついて来いって言ったら少しはましだったんですけどね」
「……なんで、勝手に行っちゃったんですかね?」
26:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 01:00:33.86 ID:sf9XWsg90
「あれ、おっ、おかしいですね。うまくしゃべぇ、しゃべれないです。変だな。さっきまでだいじ、大丈夫だっぁのに」
「わたし、だいじょぉぶで、彼がいなくても、だぃょうぶで、あんなひぉ、あんぁ、ひどい、ひどいぃ、やさしぃ、彼と」
「彼とっ、いっしょにぃ、ず、ずっとぉ、だいぃらいぃ、大好きっ、なのにっ、置いてっ、待ってたぁ、ひどいっ、思い出っ、もっとぉ」
27:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 01:01:18.91 ID:sf9XWsg90
「あぅ、うわぁ、おさけぇ、のみにぃ、うぁぁ、あとでぇぇ、だいすきぃ、あぁぁぁ、わたしぃ、Pさん、いなぅても」
「Pさん、いなくても、あ、あ、Pさん、なんぇ、なんで、Pさん、いなくぁるのぉぉ」
「うぁぁ、Pさん、いなぃ、どこ、あぁああああぁ、どうしてぇぇぇ、なんでいっちゃうのぉぉぉ!」
28:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 01:01:51.92 ID:sf9XWsg90
意味不明な言葉ばかりを発ながら、ずっと我慢していたちっぽけなプライドが、8年間の思い出とともに崩れていった。
楓さん、本当にごめんなさい。
もうちょっとだけ、私のわがままに、付き合ってください。
29:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 01:02:28.61 ID:sf9XWsg90
「楓さん、皆様、この度は本当にご迷惑をお掛け致しました」
30:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 01:03:18.05 ID:sf9XWsg90
−−あのあと。
私の様子が尋常じゃないことに気づいた楓さんが、電話しながら瑞樹さんにメッセージを入れて。
一緒にいた早苗さんと(飲んでいたらしい。楓さんと電話した時はまだ日が落ちていなかったはずなのに)3人で迎えに来てもらった。
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