10: ◆JgoilToZJY[saga]
2016/06/20(月) 06:07:53.71 ID:9fy5FiS10
「こんなところにいたか! 京太郎! 咲ちゃんも!!」
大きな声が、響いた。
振り返ると、正装した男性が慌てたように叫んでいた。京ちゃんのお父さんだ。
「お、親父!? どうして……出発の時間まで、まだあるだろ!?」
「違う! 違うんだ! げほげほ……」
「なんだよ走って来たのか? 草履も汚して……一体どうしたんだよそんなに慌てて?」
「消えたんだ……」
「何が消えたって?」
「馬だ!!」
そんな。まさか。
「探さねばならん!!」
「マジか……申し訳ないけど、お金は出世払いで返すよ。馬がないなら、なおさら今日発たないと、入学式に遅れちまう」
「お金などどうだっていい馬鹿者! 違うんだ京太郎! わかるだろう!!」
京ちゃんのお父さんは、慌てていた。顔には、大量の汗が流れていた。
私は京ちゃんを見た。神妙な面持ちをしている。さすがに京ちゃんは聡明だ。お父さんの様子から、只事じゃないと悟ったようだ。
私は既に一つの可能性を思いついていた。というか、それ以外考えられない。
「馬は丁重に管理されていた。逃げ出そうとしても無理なんだ。だれかが逃がそうとしない限り……」
そうだ。馬が暴れても抑えつけられる才のある人物がこの村にはいる。
「馬丁は片岡家に任せてあったろう? しかし、大人二人は眠っていた。眠らされていたんだ。起こして問いただしたら、娘が、と」
「……まさか」
「そうだ! 優希ちゃんも消えていたんだ!! 優希ちゃんが、馬と共に消えたんだ!!!」
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