28: ◆JgoilToZJY[saga]
2016/06/20(月) 06:29:56.82 ID:9fy5FiS10
「戦うしかないみたいだな……」
京ちゃんが声を搾り出した。
そんな……あんな怪物と戦うだなんて……!?
私は大岩土竜を見た。京ちゃんの背より高い全長。巨大で丸く、ごつごつした岩。岩から突き出すように伸びる手足と頭部。
こんなのと……戦えるワケがない……!!
「優希! 催眠薬は……!」
「きらしちゃった……! さっきむだづかいしすぎちゃったじぇ……!」
「そんな……!? 京ちゃん、戦えるわけないよね……!?」
「……」
京ちゃんは、振り向いて私たちを見た。
口角を不自然に吊り上げた。作り笑いなのは明らかだった。
「俺が奴を引きつけ、時間を稼ぐ。その間にお前らは壁を乗り越えて、馬へ乗れ」
大岩土竜はあと数歩の距離まで接近していた。
至近距離。この間合いでは、もう、議論している暇などなかった。
「俺を信じろ、咲。すぐに行くって」
京ちゃんは、剣を抜いた。
どこかから粗悪品として清澄村に入荷され、京ちゃんが購入した、刃毀れだらけのなまくら刀。
剣先を、大岩土竜に向ける。
「うおお……!」
雄叫びと共に、京ちゃんは刀を振った。
大岩土竜には、傷一つ付いていないようだった。
すぐに間合いを取り、私たちとは逆方向に駆けだす。
「咲ちゃん……! 加勢を――…!」
「行こう。優希ちゃん。私たちじゃ、戦えない」
「なっ、ほんき――…」
私に反論しようとした優希ちゃんが、押し黙る。
優希ちゃんの目は、私を見ていた。
優希ちゃんは私の手を振り解き、岩壁にしがみつき、よじ登り始める。
「うおおお……!」
京ちゃんは、どうやら上手く大岩土竜を引きつけてくれているらしい。
お陰で、私たちはある程度落ち着いて事を運べる。
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