過去ログ - 開かない扉の前で
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23:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:38:38.60 ID:BFmKl9Djo

 ケイくんが舌打ちをする。わたしの頭のなかを、いくつかの景色が過ぎる。 
 無性に走り出したいような気持ちになる。何かを叫びたいような。でも、何を叫びたいのかなんて自分じゃ分からない。

「……雨だな。戻るか」

 話を打ち切ろうとするみたいに、ケイくんは空を睨んだ。
 
 わたしが別のことを考えている間に、雨は一気に強くなってきた。

 ケイくんがフェンスから離れて校舎へ戻ろうとする。
 わたしは晴れた空の下の雨に打たれながら、まだ街並を見下ろしている。

「おい、どうした?」

 怪訝げな声。わたしは振り向かずに、言った。

「……ね、ケイくん。もしよかったら、そこに案内してくれない?」

「そこ?」

「その、遊園地」

「……タチの悪い噂だぜ。何にもないに決まってる。心霊スポットなんていっても、事故が起こった記録だってないんだ。
 放置されて景観が不気味になったからあれこれ言われてるだけで、何のいわくもない」

「うん。それでもいいんだよ」

 わたしはそこで、彼の表情が気になって、振り向いた。
 不思議と、心配そうな顔をしていた。
“心配そうな”彼の表情なんて、わたしはそのとき初めて見た。今日はずいぶん、珍しいものを見ている気がする。




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