25:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:41:18.46 ID:BFmKl9Djo
  
  とにかく、その場所に行ってみたいと思った。 
  
  なにもないなら、なにもないことを確認したい。 
  なにかあるなら、それがなんなのか知りたい。 
  
 「だめかな」 
  
  わたしは、そう訊ねた。ケイくんは少しの間沈黙してから、仕方なさそうに苦笑した。 
  
 「……ダメだって言ったら、ひとりでも行きそうだもんな」 
  
 「うん」 
  
 「じゃあ仕方ない。言っておくけど、見に行くだけだぞ」 
  
 「……ケイくん、そんなに付き合いよかったっけ? 心配してくれてるの?」 
   
  純粋な問いかけを、ケイくんはバカにするみたいに笑った。 
  
 「何もないとは思うけど、仮に何かあったら、俺の寝覚めが悪いだろ」 
  
  それだけだ、とそっけなく呟いてから、ケイくんはこちらに近付いてきて、 
  わたしの背中をぽんと押して、「早く中に戻るぞ」と、いつもよりちょっとだけやさしい声で言った。 
  
  その瞬間も、廃墟のミラーハウスのなか、ひとりで立っているかもしれない女の子のことが、 
  どうしてだろう、わたしの頭からは、離れてくれなかった。 
  
  
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