15:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:29:05.81 ID:BFmKl9Djo
  
  学校の敷地内を、ぼんやりと見下ろす。 
  
  下校しようとしている生徒たちの姿が見える。階下から吹奏楽部の音階練習、剣道部が外周を走っている。 
  武道場から畳を打つような音、体育館からバスケットボールの跳ねる音。 
16:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:30:11.42 ID:BFmKl9Djo
  
  わたしはその言葉を聞き流しながら、いくつかのことを思い出した。 
  
  母さんのこと、叔父のこと、妹のこと。そのどれもがなんだか遠い。 
  
17:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:31:33.72 ID:BFmKl9Djo
  
 「……どうしてなんだろう?」 
  
  思わず、そう声をあげたとき、ケイくんが不可解そうにこちらを見た気がした。 
  わたしは彼の方を見ていなかったから、彼の視線がどこに向かっていたかは、本当のところ分からなかったけど。 
18:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:32:28.47 ID:BFmKl9Djo
  
 「本人に聞けよ」 
  
 「だって、もう死んじゃったし」 
  
19:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:34:06.36 ID:BFmKl9Djo
  
  それでも五分もしてしまえば、泣き続けるのにも疲れてくる。 
  尽きない悲しみがあったとしても、それをずっと貫けるほど肉体は付き合いがよくない。 
  
  彼は気を遣わないわけじゃない。 
20:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:34:58.39 ID:BFmKl9Djo
  
 「それ、どんな話?」 
  
  わたしは、ただのくだらない噂か何かなんだろうと、そう分かっていたのに、 
  どうしてか変に気になって、思わず聞き返してしまった。 
21:名無しNIPPER[sage]
2016/07/04(月) 00:35:28.31 ID:qZtjRuTp0
 なんかいいな 
 この2000年代前半のジュブナイル小説みたいな感じ 
22:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:36:45.18 ID:BFmKl9Djo
  
 「……隣の市に、遊園地の廃墟があるの、知ってる?」 
  
 「あの、心霊スポットとかっていう?」 
  
23:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:38:38.60 ID:BFmKl9Djo
  
  ケイくんが舌打ちをする。わたしの頭のなかを、いくつかの景色が過ぎる。  
  無性に走り出したいような気持ちになる。何かを叫びたいような。でも、何を叫びたいのかなんて自分じゃ分からない。 
  
 「……雨だな。戻るか」 
24:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:39:38.36 ID:BFmKl9Djo
  
 「ちょっとした、暇つぶしっていうか、儀式っていうか、ただの肝試しでもいいんだけど、何かしたい気分なんだ」 
  
 「……探検?」 
  
992Res/853.12 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
板[3] 1-[1] l20 
	このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
	もう書き込みできません。