過去ログ - 開かない扉の前で
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45:名無しNIPPER[saga]
2016/07/05(火) 23:53:35.11 ID:b+Qvcd5ho

 わたしは鞄のなかに入れてきた水筒で水分補給をした。

「そういうところは、妙に準備がいいな?」

「うん。もっと褒めて」

 ケイくんは鼻で笑った。

 壁には埃の被ったカレンダーが貼られたままになっていた。
 日付は十数年前のものになっていた。

 こうして見てみると、わたしが生まれた頃も、まだ営業していたのか。
 勝手に、もっとずっと過去のものだと思い込んでいたけれど。

「少し休んだら、歩きまわって探さないとな」

「何を?」

「ミラーハウス」

「……うん」

 ひとけのないレジャーランドの中を歩いていると、自分が奇妙な夢に入り込んだみたいな気分になる。 
 こんなに現実感にあふれる建物すらあるのに、それすらもディティールの凝った悪夢みたいだ。

 耳鳴りのしそうな静けさと、雨粒のささやかな音が、その感覚をいっそう強めた。


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