44:名無しNIPPER[saga]
2016/07/05(火) 23:51:30.11 ID:b+Qvcd5ho
敷地内は、思ったほど荒廃した様子ではなかった。
まずいちばん近くにあった建物は、シャッターが閉ざされていた。
建物の位置と大きさを見るに、土産物や食べ物を取り扱っていた売店か何かだったのだろう。
近くには「園内への飲食物の持ち込みはご遠慮ください」という立て札。
すぐに目についたのは飛行機の形をしたアトラクションと、
そこからフェンスを挟んだ向こうにあった小さな小屋。
歩き疲れたわたしたちは、ひとまずそこで雨宿りを兼ねて休憩することにした。
幸い、フェンスには人一人通れるくらいの小さな隙間があった。
鎖で遮られてはいるけれど、おそらく出入り口だったのだろう。
廃屋のなかは思ったほど荒れていなかった。
従業員用の休憩室か何かだったのか、埃を被ったテーブルと、使われていたらしい扇風機がそのままにされている。
畳の上には正体不明の何かのかけらが散乱していたし、障子は破れて木枠以外はほとんど残っていた。
黒ずんだ木枠の向こうは裏手にある山の斜面に面していて、すぐ傍から植物の匂いがした。
「蛇でも出そうだな」とケイくんが言う。あんまり脅さないで欲しい。
ぽつぽつという雨音は、強まりもしなければおさまりもしなかった。
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