過去ログ - 開かない扉の前で
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56:名無しNIPPER[saga]
2016/07/07(木) 01:03:24.42 ID:btuqrQDio

「……なにか、変じゃない?」

 わたしの声に、彼は静かに溜め息をついた。

「話しているうちに、わかんなくなっちゃったのかもな。行き止まりにでも入り込んだんだろう」

 その言葉を、彼自身も信じきっていないのは明らかだ。
 だってわたしたちは、まっすぐ歩いてきたんだから。
 
「……とにかく、出口をさがさないとな」

 ケイくんの言葉に、頷く。
 ふたたび彼が前に一歩踏み出したとき、わたしはまた声を掛けた。

「ねえ、ケイくん」

「なに?」

「……手を、繋いでくれる?」

 彼は一瞬黙りこんだかと思うと、何も言わずにわたしの手をとった。
 それから、仕方なさそうに溜息をつく。

「……ありがとう」とわたしは言った。本当は、それどころじゃなかった。
 なんだか、ひどく――肌寒い。




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