792:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:37:39.83 ID:IXxsBwaSo
青褪めた朝を、わたしたちは傘もささずに歩いた。
地下鉄駅の構内で、人々はせわしなく改札口に飲み込まれていく。
切符売り場に小銭を放り込むと、一瞬だけ、何かが変わったような気がした。
ぞろぞろと続く人並みの中で、わたしたちは付かず離れずの距離を保ったまま並んで歩いた。
車両の中は、そこそこ混み合っていたけれど、わたしたちは労せずに座席に腰掛けることができた。
隣り合って並びながら、扉が人々のからだを文句を言わずに飲み込むのを内側から眺めている。
変な気分だった。
この中の誰とも、わたしは同じ時間に生きていないのだ。
彼らにとってこの時間こそが故郷で、わたしはそこに迷い込んだ旅人に過ぎない。
どこまでも観客だ。
知っている街。
記憶のかなたに宿っている街。
それは、けれど、異郷のようだ。
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