796:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:40:51.99 ID:IXxsBwaSo
目的の場所に向かって、傘もなく歩いていくしかなかった。
この街で今、もっとも高い場所。三十階建てのビル、その頂の展望台。
そこにざくろはいるはずだ。
たいして入り組んだ地形だというわけでもないのに、目的の場所をなかなか見つけられずに、わたしたちは街をさまよう。
わたしはときどき立ち止まって、空を見上げてみた。
雨が真上から降り注ぐ光景を見るのが好きだった。
自分が空へと昇っているような気がして。
ケイくんはわたしのそんな気まぐれにも、文句のひとつも言ってこなかった。
ようやくたどり着いたときにはだいぶ雨に濡れてしまっていたが、建物に入るのを躊躇うほどではなかった。
入る前に、わたしは建物の高さをたしかめてみた。
わたしはここに来たことがある。……お兄ちゃんと一緒に。
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