797:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:41:42.56 ID:IXxsBwaSo
中に入ると、綺麗な制服を着たふたりの女の人が受付の向こうからわたしたちのことをちらりと見た。
ケイくんは気にせずに先に進んで、展望台まで直通のエレベーターを探した。
798:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:42:11.82 ID:IXxsBwaSo
エレベーターは静かに昇っていく。
街があっというまに小さくなっていく。
799:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:42:38.78 ID:IXxsBwaSo
「……そっか。ケイくん、会ったんだ」
彼はもう、それ以上言葉を続けようとしない。
800:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:43:04.81 ID:IXxsBwaSo
わたしたちはエレベーターに乗り込んだ。
扉はもうしまって、箱は昇り続けている。
この扉は、もう閉ざされている。
801:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:43:46.42 ID:IXxsBwaSo
◆
風船は がらんどうなので、
802:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:44:17.12 ID:IXxsBwaSo
◇
扉が静かに開いた。
803:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:45:00.16 ID:IXxsBwaSo
誰かに話しかけるような、ざくろの言葉の意味はわからない。
わたしは、静かにケイくんの手をとった。
「お兄ちゃんが、この世界のお兄ちゃんを刺した理由、なんとなく分かる気がするの」
804:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:45:28.75 ID:IXxsBwaSo
「――加害者側からの、理屈ね」
不意に、ざくろがそう言った。
805:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:46:52.54 ID:IXxsBwaSo
「血……?」
「そうよ。そうじゃないと不合理でしょう?」
806:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:47:49.68 ID:IXxsBwaSo
ねえ、そんな"誰か"なんていると思う?
「ねえ、わたしたちが心の底から笑える場所ってどこだと思う? そんなものがあると思う?
居心地が悪いのよ。なんだか何をやっても無理やり笑わせられてるような気がする。
807:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:49:12.52 ID:IXxsBwaSo
その人は、わたしとケイくんのことなんて見えていないみたいに、まっすぐにざくろに視線を向けていた。
「ねえ、ざくろ。あなたの言いたいことは分からなくもない。血は、流されないといけない。
でも、それは他の誰かの血ではないはずよね。遼一が、こっちの遼一を刺した。それは、事実かもしれない。
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