805:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:46:52.54 ID:IXxsBwaSo
「血……?」
「そうよ。そうじゃないと不合理でしょう?」
どうしてだろう?
ざくろは、泣き出しそうな顔をしているように見えた。
「痛みを与えられた人間が、ただ痛みを堪えていれば済むなんて、そんなの間違ってる。
理由があったから、事情があったから、人を傷つけていいなんて理屈にはならない」
だから、血は流されないといけない。
ざくろはそう繰り返してから、何かを覆い隠すみたいに笑った。
「……まあ、これはどうでもいい話だね」
こっちにきて、とざくろはわたしたちを手招きした。
手を繋いだまま、わたしたちは彼女の立つ場所へと向かっていく。
ガラスの向こうには、灰色の空と静かな街並みが、無音のままひらべったく広がっている。
「誰かが誰かを傷つけてる。あなたのお母さんが、あなたを捨てたように。
あなたの叔父さんが、誰かを刺したように。わたしのお父さんが、わたしを殴って、わたしを殺したみたいに」」
と、そう、ざくろは言う。
「でも、誰かを傷つけた誰かにも、理由はある。そんなふうになってしまったのは、その人だけのせいじゃない。
環境、遺伝子、何かの出来事、世間、社会の雰囲気、法律、もっと根深い、"大いなる不安"とでも呼ぶべき何か。
連綿と続く歴史がつくった、社会通念。流布される常識。そんなものが、わたしたちの行動を縛り付けてる。
わたしたちはそれを、自分の意思で決めたことだと信じているけれど、でも、その意思を決めているのは……誰なのかな」
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