過去ログ - 開かない扉の前で
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815:名無しNIPPER[saga]
2017/10/30(月) 00:29:41.17 ID:J5LgB8ivo




 どのくらい歩いたかは、もうわからなくなってしまった。
 
 ひとつの扉の前で立ち止まる。

 それは見覚えのある扉だった。

 何度も何度も、目にした扉だった。

 お兄ちゃんの部屋の、扉だ。

 どこまでも伸びる白い廊下の、その途中に、見逃しそうなくらいさりげなく、その扉はあった。
 他のどの扉とも、違ったところがあるわけでもない。ただ何気なくあるだけだ。

 それなのに、わたしにはその扉がそうだとすぐに分かった。

 そうなのだ。

 結局、わたしはこの扉の前で立ち止まってしまうのだ。

 そして、ノブを捻ってしまう。最初から分かっていた。見た瞬間に気付いていた。




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