869:名無しNIPPER[saga]
2017/11/11(土) 00:18:43.47 ID:Ch5AfJxSo
◇
そしていま、僕とあさひは夕日がさしこむ彼女の家のダイニングで差し向かいになってテーブルを挟んで座っている。
あたりには沈黙が――無音とは違う、沈黙が――漂っている。
あさひが入れてくれたコーヒーがカップに入っている。綺麗な意匠のソーサーには金色のマドラーとスティックシュガー。
あさひは何も言わずに僕にそれを差し出して、僕は何も言わずにそれを受け取るでもなく受け取った。
違う、受け取ったつもりなんてない。でも、気付いたら差し出されていて、受け取ったことになっていた。
いつもそうだ。
いつだってそうだった。
いつのまにか、僕は受け取っていた。受け取るつもりのないものを、差し出されていた。
そして、抱え込んで、いつのまにか、その重さで崩れ落ちそうになる。
引き受けたつもりのないものを、いつのまにか引き受けている。
夕日が沈めばやがて夜が来る。
外では雨が、蒸気のような雨が、辺りを覆い隠そうとしている。
僕らは屋根の下にいる。
壁があり、床があり、窓がある。
雨は、外に吹き付けている。
ここではない。
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