過去ログ - 開かない扉の前で
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92:名無しNIPPER[saga]
2016/07/17(日) 23:18:05.93 ID:MgYlpmbSo

◇[Diogenes] R/a

 
 僕と彼女にとって、だいたいの会話がそうであったように、
 その日、篠目あさひがその話を僕にしたのだって、
 たいした理由があってのことではなかったのだと思う。

「消えちゃうらしいよ」
 
 と彼女は言った。

 僕たちは、昼休みの図書カウンターの内側で、ふたりそろってパイプ椅子に座って、
 それぞれに別々の本を読んでいた。

 八月の末だ。

 どこか遠くの街で大雨が続いているらしく、
 水浸しになった道路をかき分けるように進む車の映像が、
 テレビでは朝から繰り返し何度も放送されていた。
 
 そんな日だったけど、その雨は僕たちの暮らす街にはまだ辿り着いていなくて、
 だから窓の外の景色は実に平穏な、夏の終わりにうってつけの、少しうつろな晴れ空だった。



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