928:名無しNIPPER[saga]
2017/11/26(日) 23:22:27.49 ID:L2HTNNmfo
◇
僕は、窓の外の景色にもう一度目をやる。
この窓からは世界を見渡せる。そんな気がする。
ここにいるかぎり、何もかもわかりきっている。そんな気さえする。
けれど今、かすかにガラスにうつる僕自身の顔と、その背後の扉が僕の呼吸をひそかに荒くさせる。
さっき聴こえた声は、なんだったんだろう。
時がたつに連れて、それが単なる空耳とは思えなくなってきた。
なにか、啓示のようなものにすら感じられる。
けれど、今は、それは何かあやふやなものとしてしか、僕のなかには存在していない。
振り返った先の扉を見たときも、たいした感慨なんてわからなかった。
なぜとか、どうしてとか、そんな言葉は言い飽きた。
問題は、僕にこの場所を離れる気があるかどうか。
それだけだという気がする。
体ごと振り向いてしまうと、僕はもうその扉と向き合うしかない。
僕は、把手をつかみ、扉を開く。
その先にあるのは、やはり、暗闇にしか思えない。
横たえた暗闇、その先にもきっと、何か劇的な変化なんてもwのはないのだろう。
ただ、今ここにあるすべてと変わらない何もかもがあるだけなのだろう。
それでも僕は、その扉の先へと向かうことにした。
誰かが泣いているような気がした。
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