929:名無しNIPPER[saga]
2017/11/26(日) 23:23:03.95 ID:L2HTNNmfo
◇
扉をくぐった先は、けれど、さっきまで見ていた景色となんら変わらないものだった。
展望台、高い場所、さっき見た通りだ。
鏡の中に入ったみたいにさっきまで見下ろしていたのと同じ景色が広がっている。
けれど、さっきまでとは違う。何かが、違う。
一瞬、僕は自分が元の世界に帰ってきたのかと思った。
でも、それが間違いだとすぐにわかる
大きな窓から外を見ると、相変わらずの曇り空の上に、月がふたつ、浮かんでいる。
まだ昼だというのに、やけにはっきりとした輪郭で、たしかに浮かんで見える。
僕は、窓に背を向けて歩き始めた。
もう扉の先の景色は向こう側につながっていない。ただ厄介なオブジェに過ぎない。
展望台の窓から離れ、僕は階段を降りる。
どこかには行かなければいけないんだ。
通路の先には冷え冷えと鋭い光を宿すエレベーターの扉がある。
僕は人の気配のない通路を進んでいく。
エレベーターは閉ざされている。
僕は、スイッチに触れる。
下に向いた矢印の背景が、橙色に灯る。
やがて機械の音が聞こえる。近付いてくる。
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