944:名無しNIPPER[saga]
2017/11/28(火) 01:12:30.30 ID:OSRTiBSYo
◇
そして、俺は、ここに立っている。
交差点の前、横断歩道の傍、
道路の向こう側に、誰かが立っている。
それは、碓氷遼一の姿に見える。
彼はただ、ぼんやりと、視線をこちらに向けている。
俺は、不意に気付く。
自分の斜め前に、ふたりの男がいる。
片方は、煙草に火をつけて、立っている。二十代半ば頃の、男だろうか。
その横顔、それは、碓氷遼一のそれに似ている。
あるいは、そのもののように見える。
その後ろに立っている誰かは、彼の様子をうかがっている。
ヘッドライトの光がちらついている。向こうから車がやってきている。
不意に、音が止まった。
「ここは、碓氷遼一が死ぬ地点」
とざくろの声が聞こえた。
一切は音を失っている。彼女の声だけが聴こえる。
時間が止まっているみたいだった。いや、その通りなのだろう。
「背中を突き飛ばそうとしているの」とざくろが言う。
俺は、斜め前に立つふたりの男を眺める。
「あなたは、これから起きることを、変えられるかもしれない」
でも、よく考えてね、と彼女は言う。
「何が起きるかを、よく考えてね」
992Res/853.12 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。