過去ログ - 開かない扉の前で
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944:名無しNIPPER[saga]
2017/11/28(火) 01:12:30.30 ID:OSRTiBSYo




 そして、俺は、ここに立っている。

 交差点の前、横断歩道の傍、
 道路の向こう側に、誰かが立っている。

 それは、碓氷遼一の姿に見える。

 彼はただ、ぼんやりと、視線をこちらに向けている。

 俺は、不意に気付く。
 
 自分の斜め前に、ふたりの男がいる。

 片方は、煙草に火をつけて、立っている。二十代半ば頃の、男だろうか。
 その横顔、それは、碓氷遼一のそれに似ている。

 あるいは、そのもののように見える。

 その後ろに立っている誰かは、彼の様子をうかがっている。

 ヘッドライトの光がちらついている。向こうから車がやってきている。

 不意に、音が止まった。

「ここは、碓氷遼一が死ぬ地点」

 とざくろの声が聞こえた。

 一切は音を失っている。彼女の声だけが聴こえる。
 時間が止まっているみたいだった。いや、その通りなのだろう。

「背中を突き飛ばそうとしているの」とざくろが言う。

 俺は、斜め前に立つふたりの男を眺める。

「あなたは、これから起きることを、変えられるかもしれない」

 でも、よく考えてね、と彼女は言う。

「何が起きるかを、よく考えてね」




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