過去ログ - 開かない扉の前で
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948:名無しNIPPER[saga]
2017/11/28(火) 01:15:15.68 ID:OSRTiBSYo

 起きてしまったことを、本当に変えられるのか?
 そんなのありえない、とも思う。けれど、ざくろなら、ざくろだったなら。
 
 彼女なら、できてしまうかもしれない。この俺が消え失せて、愛奈が悲しまない未来を、作れるかもしれない。

 逆から、考えてみよう。

 ここで俺が何もしなければ、碓氷遼一は死ぬ。
 ざくろの言葉を信じるなら、それなら俺は、このまま存在し続けられる。
 そして、元いた場所、愛奈がいる場所に、帰ることができる。
 
 ……けれど、碓氷遼一を見殺しにしたその後に、俺は愛奈と一緒にいられるだろうか?
 それを、俺自身は許せるだろうか?

 いつのまにか、また、音が消えている。

 ざくろが、傍らに立っている。

「……おまえは、いったい何なんだ?」

 そう問いかけずにはいられなかった。

「こんなの、どこに選択権があるっていうんだ。どっちを選んだって、ろくな結果にならない」

 ざくろは、俺の姿を笑っている。楽しんでいる。

「おまえは、いったい、何がしたいんだ? どうして、俺をここに連れてきたんだ?」

「あなたが、いちばん、まともなままだったから」

 ざくろは、そう言った。

「まともな人は、苛立たしい」

 吐き捨てるような彼女の言葉を、俺は聞いた。
 悲しそうな目をしている。そんな場違いな印象を覚える。

「もっと傷ついて。わたしは、それを見たいの」

 何がどう狂ったら、ひとりの少女が、こんな姿になるっていうんだろう。
 こんな、神様みたいな姿に。





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