959:名無しNIPPER[saga]
2017/12/06(水) 01:31:28.07 ID:IzyndCNto
  
  ふとした瞬間まばたきをして、目を開けたら、僕の目に飛び込んできたのは、ひとつの扉だった。 
  
  どうして突然、目が覚めるように体の感覚を取り戻したのか、 
  思考が正常さを取り戻したのか、そんなことは僕には分からない。 
   
  問題は、目の前に扉があり、その背景は真っ黒だということだった。 
  
  ただ、空間に浮かび上がるように扉だけがそこにある。 
  
  交差点で見た光景。 
  僕を、彼が助けていた場面。 
  
  別に、僕を許したから助けたわけではないだろう。 
   
  彼はただ、僕が死んでしまったら悲しむ人がいるから、僕を助けたに過ぎない。 
  
  僕のためじゃない。 
  
  それでも僕は、その景色に従うことにした。 
  もう、この扉の先に何が待っていたとしても、その景色に従おう。 
  
  今の僕にできるのは、ただそれだけのことに思えた。 
  
  いったいどこに連れて行かれるかは分からない。 
  
  拍子抜けするような場所かもしれない。 
  
  また暗闇の中なのかも。 
  
  それでもかまわないと思った。 
  
  僕は、今までだってずっと流されていただけだし、これからだってそうしていくだけだ。 
  
  
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