976:名無しNIPPER[saga]
2017/12/11(月) 00:54:34.49 ID:S5mn3zpLo
◆[L'Oiseau bleu]A/a
わたしがいない間に、二週間が経っていた。
わたしが帰ってきてから、二週間が過ぎた。
季節はもう、秋へと移ろっていた。
わたしが帰ってきた日の夜、おばあちゃんはわたしを抱きしめてくれた。
警察の人に事情を聞かれたけど、どう答えればいいのかわからなくて、何も言えなかった。
二週間の間野宿をしていたにしてはわたしの服装は綺麗で、どこかにさらわれていたとしても綺麗で、
だから結局警察は、不良少女の家出という現実的な解釈をしたのだと思う。
たいしたことは聞かれないまま終わってしまった。
おばあちゃんは高校に届け出てはいなかったみたいで、だからわたしは、
季節の変わり目にタチの悪い風邪を長引かせていただけだと、周りには思われていたようだった。
その奇妙な現実的な感覚は、かえってわたしの頭を混乱させた。
わたしの世界では相変わらずお兄ちゃんは死んでいて、相変わらずお母さんは傍にはいなかった。
お兄ちゃんが貯めてくれたお金もそのまま残っていた。ただ時間だけが流れていた。
そのせいでまるで、あの世界で起こった何もかもが悪い夢だったんじゃないかという気さえした。
――言ったろ。そのうち覚める夢だと思うことにしたんだ。
結局、彼の言葉の通りになったのかもしれない。
そのうち覚める夢。
けれど、夢から覚めたはずのわたしの傍に、ケイくんはいない。
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