977:名無しNIPPER[saga]
2017/12/11(月) 00:55:00.90 ID:S5mn3zpLo
それがどうしてなのかは、分からない。
でも、よく考えてみたら、ケイくんがこっちに帰ってきていたとしても、わたしはケイくんを見つけられないかもしれない。
同じ高校に通っているとはいえ、この学校の生徒なんて何百人といて、
その中で彼だけを見つけ出すなんて至難の技だし、わたしは彼のクラスも知らなかった。
もちろん見つけ出そうと思えば名前を頼りに探すことだって出来ただろうけど、それはしなかった。
屋上の鍵は閉まったままになっていた。彼はわたしの前に姿を見せない。
そうである以上、ケイくんは帰ってきていない、と考えるのが、自然なことに思えた。
それでも毎晩夢を見るたびに、ちらつくのはざくろの言葉、ケイくんの声。
――俺と、もう関わらないでくれないか?
――だからね、"血は流されないといけない"。
不吉な響きと、拒絶の言葉。
それがわたしの心を不安にさせなかったと言えば、嘘になる。
一週間前の土曜、わたしはひとりで例の遊園地の廃墟へと向かった。
同じような道のりを一人で歩いて、ミラーハウスのあった場所まで。
その日は雨は降っていなかったし、奇妙な物音も聴こえなかった。
ミラーハウスだった建物は、もうどこにもなかった。
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