153: ◆FlW2v5zETA[saga]
2016/08/09(火) 15:41:10.88 ID:8dWkI+gE0
「戻りましたー。」
「ん。おかえりー。」
そして時刻は戻り、現在。
食事を終えて宿舎に戻ると、先に北上が寛いでいた。
ベッドにごろりと横たわり、何やらゲームをしているようだ。
夕張はと言えば、その様子を気にしつつ、自分にあてがわれたベッドに腰掛け、イヤフォンを付ける。
せっかくのお気に入りの曲ではあるが、なかなかこの気まずい空気では頭に入ってこない。
そうしてアルバムも6曲目に入った辺りで、北上がちらりとこちらを見てきた。
何やら聴いているものが気になるらしく、夕張は一度プレイヤーを止めると、イヤフォンを外した。
「ごめんなさい、音大きかったですか?」
「いや、違う違う。夕張ちゃんもそのバンド好きなの?」
「北上さんもですか?」
「うん。もう切なくてさ、侘び寂びよねー。ところで夕張ちゃんさ…バッグから見えてるの、DS?」
「ええ、夜は暇になるかと思って。」
「ふふー…対戦やんない?」
そして二人は、互いのベッドに横になりつつ対戦を始める。
彼女達がプレイするのは、レースゲーム。
二人共やり慣れているらしく、CPUの車はほぼ空気と化した接戦を繰り広げていた。
「はい、赤甲羅。」
「えぐっ!?そこで仕掛けます!?」
「こういうのはギリギリがいいんだよー…のわっ!?もー、アイテム爆弾誰ー?」
「ふふー、私ですよー。はい、巻返しです。」
「やったねー……ーーー♪」
白熱した展開を繰り広げる中、不意に隣のベッドからは、小さなメロディが聞こえる。
どうやら北上はプレイしつつも、お気に入りの一曲を口ずさんでいるようだ。
「へー、その曲好きなんですね。」
「うん。言われてみたいもんじゃない?俺はどうしようもなく愛しい〜♪なんてさ。」
「意外とロマンチストなんですね、北上さん。」
お互い恋敵のはずだが、いざちゃんと話してみれば、存外趣味が合う。
ケイの事が無ければ、もしかしたら普通に仲良くなれていたかもしれないな、と夕張は思っていた。
しかし先ほど北上が口ずさんだフレーズを、『誰に言われたい』のか。
それについては、お互い触れる事は無く。
「よし!お風呂行くー!」
「あ!勝ち逃げ!待って下さいよー。」
そしてと共に浴場へと向かうと、まず北上は大きな三つ編みをほどく。
こうして見ると随分長いと夕張が思う間に、次に服に手が掛かり、そうして見えたものに、彼女は強い衝撃を受けた。
“えっ…この傷……。”
丁度右肩から乳房の外側へ走る、大きな傷跡。
肩の傷は特に、ショルダーバッグでも掛けているかのように大きい。
一体何で出来た傷なのか、夕張には到底想像が付かなかった。
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