過去ログ - 北上「離さない」
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163: ◆FlW2v5zETA[saga]
2016/08/14(日) 00:35:06.01 ID:zSRVS9Wi0

“ん……今何時ー…?げ、まだ2時かぁ…。”


目を覚ましたのは、夕張だった。

昨夜は逃げるように寝てしまったが、さすがに今夜はもう少し余裕を持って眠れる。
彼女はそうタカを括ってはいたものの、いざ気持ちに余裕が出来ると、今度は慣れない寝心地に目が覚めてしまったらしい。

アプリを開くと、案の定仕事の報告以外無し。
はぁ、と溜息を吐いて毛布を被ると、何やら妙な音が耳に触れる。


「…………あ……う…」


耳を澄ませると、それは人の呻き声だ。
幽霊の様な気配は無い。となると、当然発生源は一つに絞られる。


“えーーっ!?ここでまさか…嘘でしょ…!?”


何やら不埒な想像が浮かんでしまうが、それは思い過ごしだと言う事に、夕張はすぐに気付く事となる。
苦しそうな呻き声に紛れ、とある言葉が聞き取れたからだ。


「おとうさん…おかあさん………コウ、ちゃん……。」


北上の方を向くと、苦悶の表情を浮かべる彼女の姿が映る。
そのただならぬ様に心配になった夕張は、恐る恐る北上の方に近づき、彼女の肩を優しく揺らした。

しかしなかなか起きず、2度3度と肩を揺らし時、不意に北上の瞼から溢れるものが見えた。
その様に一瞬夕張は躊躇いを覚えるが、このままではきっと良くない。

そして4度目に肩を揺らした時、北上はようやく、うっすらと瞼を開けたのであった。


「ふぁ……夕張ちゃんなにー?眠いよ〜。」
「何じゃないですよ、大丈夫ですか?すごいうなされてましたけど……。」
「そうなの?全然覚えてないよー…うわ、ひどい汗。」


不機嫌そうに目を覚ましたかと思えば、北上は何事も無かったかのように、寝汗に苦笑いを浮かべている。
しかし彼女の手は右肩に置かれ、その手が微かに震えていたのに夕張は気付いている。

押さえられたTシャツの裾は乱れ、少し肩の古傷が見えている。
そんな北上の姿は、夕張には、普段よりも小さいものに見えていた。




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