287: ◆FlW2v5zETA[saga]
2016/09/19(月) 03:17:01.74 ID:E7lzRi1dO
続いて隣の部屋を開けると、今度は半袖のセーラー服が壁に掛けられていた。
こちらの部屋は物の多くが持ち出され、ラックが空となった箇所が目に付く。
しかし火事場泥棒と言うには、余りにも部屋が荒れていない。
恐らくは、元いた部屋の主が私物を持ち出したのであろう。
部屋の隅に積まれたファッション誌の日付けは、3年半程前のもの。
それがこの家が、時を止めた季節を示している。
机には、とある資料が積まれていた。
それは県内にある、美容学校の資料だった。
彼女はリュックから道具を取り出すと、黙々と、まだ無事な場所の掃除を始める。
空気を入れ替え、窓を拭き。
そして使い捨てのクリーナーで隅々を拭いて。
こうすれば多少なりとも、風化も誤魔化せる。
思い出の場所を、少しでも綺麗に残しておきたい。
そんな気持ちの表れだろうか。
最後、玄関に花束を置き。
女は車へと向けて、ぽつぽつと歩き出す。
そして一度振り返り、彼女はひどく寂しげに、こう呟いた。
「みんな……また来るね…。」
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