514: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/03/03(金) 01:56:52.34 ID:R10vLyUC0
“あれから3年半、深海棲艦襲撃事件の生存者の今を追う…えぐいねー、感動ポルノって奴?”
はっきり言って、そんな特集を組むテレビにヘドが出た。
でも頭では皮肉を吐いても、アタシはそこから目を逸らせなくて。
大方、アタシと同じくあの地獄を潜った人なんて、ロクな生き方しちゃいないだろうと。そうタカをくくってインタビューを観ていた。
出てきたのは、アタシと変わらないぐらいの女の子だ。
年頃の女の子らしい服を着ていて、口元しか映らない顔でも、アタシより可愛い子だって事ぐらいは分かって。
だけど鎖骨や頬には、アタシよりもずっと目立つ傷。
奴らの爪痕だって、同じような傷のあるアタシにはすぐ分かった。
「家族はみんな亡くなって…辛い事や思い出したくない事は沢山ありますけど、今はやっと、前を向いて生きていける気がします。
今は自分の花屋を開くって夢に向かって勉強をしていて…。」
ボイスチェンジャー越しでもわかる、はっきりとした意志。
お花屋さんで働いて、毎日笑顔を見せて。
今は新しい街にも馴染んで、優しい彼氏だっているんだって。
それは同じ境遇のアタシとは、似ても似つかない生活だった。
肩の傷がズキズキと疼いて、涙が出た。
だけどそいつは痛みや感動なんかじゃなくて、もっと下卑た涙だ。
…分かってるよ。どんな目に遭ったって、まともな奴はまともだって。
アタシの頭がおかしいだけなんだ。そばにいてくれる彼やみんなにこんな気持ちを持つアタシは、狂ってるんだって。
テレビのその子と自分を比べては、惨めで不様で、涙が止まらなかった。
艦娘ってさ、バケモノって言われる事もあるんだって。
そりゃそうだね、ヒトを超えた力を手にしたヒト。そんなのなんて、バケモノか。
でもアタシなんて、艦娘じゃなくたってもうバケモノだ。
人でなしって、そういう事じゃんか。
心が人間やめてたら、もうそれはバケモノじゃんか。
だからアタシは、『その時』が来たら____
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